俳句の作り方 秋麗の俳句
これまでブログに掲載した私の作品はすべて一流の選者が選んだものばかりです。
客観性のある鋭い眼でよりわけられた俳句です。
いっぽう自選の句はわたくしのほぼ主観が基準です。
したがって自選の句が皆様の鑑賞に堪えうるのか疑問です。
それでは第一線の選者による特選句をご紹介します。
アイロンで伸ばす初恋秋麗 伊庭直子いばなおこ
アイロンで のばすはつこい あきうらら
秋麗が秋の季語。
「秋晴れの、まぶしいほどの太陽に万物が輝くさまである。
春の『麗か』を思わせ、次に来る季節である冬を
ふと忘れるような美しさを感じさせる。」
(俳句歳時記 秋 角川書店編)
この句は「きごさい」の第18回恋の俳句大賞で
長谷川櫂はせがわかい選によって特選を獲った作品です。
特選句は4句、入選句は6句でした。
2022年令和4年に投句しました。
さて、恋という物語をアイロンなぞで伸ばすなんていうことができるのでしょうか?
出来るのです。
お天気の良い日、アイロンでシャツブラウスのしわ伸ばしをしていました。
ふと、半世紀前の初恋が思い出されました。
失恋です。
くしゃくしゃの思い出です。
その苦い記憶が、アイロンがけをしているうち
ほろ苦くはあっても甘やかな経験のように感じられたという俳句です。
なぜそう感じたのかは、やはり50年という時間の経過の作用です。
くしゃくしゃの想いでのしわをアイロンで伸ばす。
まさに半世紀という時間の結晶の作品です。
秋麗でなく、たとえば小夜時雨さよしぐれを下五にもってくると
初恋の儚さが強調されます。
私は初恋を懐かしんでいたので、明るい季語を取り合わせました。
秋麗がぴったりだと考えました。
ただ初恋をひらかなにすれば良かったのかなと今思います。
アイロンで伸ばすはつこい秋麗
アイロンで伸ばす初恋秋麗
アイロンで伸ばす初恋秋麗
アイロンで伸ばすという措辞最高ですね。デートを夢見て買った特別な洋服、あるいはデートがかなって当日着て行った洋服、でもデートは一回きりで終わってしまったのでしょうか。はれの日にたった一度しか着れなかった洋服。あるいは念願叶い、しばらくはしあわせな日々が続いたのでしょうか。様々なことが思い浮かびます。その洋服をアイロンで伸ばすという表現で、長い年月が経過した初恋であろうかと推測されます。シャツ・ブラウスなどの言葉を使わずともアイロンで伸ばすで、裏で隠れているものが見えます。私は「アイロンで伸ばす初恋秋うらら」のほうが好みです。